DSP(Digital Signal Processor)によるSSBの作り方(第3回、最終回)

(第3回、最終回)

99/7/19


前回の続きです。特性の評価と雑記です。

N.スペクトラムアナライザによる測定(1999・3・20)

コンピュータをスペアナとして使用するソフトが入手できたので、DSP出力を測定した結果である。
1)コンピュータをスペアナとして使用するソフトによる測定。
2)windowsのソフトであり、コンピュータ本体のマイク入力ジャックから入力する。
3)サウンドカードを使用し、16ビットA/Dによる測定システム。
4)各入力にはアッテネータを使用。(下図)
5)カーソルがないため、値が正確に読めなが、おそらく誤差±2〜3dB程度と考える。

a)スプリアス、折り返しのチェック
サンプリング周波数は、18.518kHzのとき、スプリアス強度−60dBを確保するためには、キャリアの周波数より11kHz離れて約30dB減衰のあるフィルタを使用する必要がある。
折り返し11.1kHzから上側の減衰はD/A内蔵のローパスフィルタの効果、11.1kHzから下側の減衰はSSBフィルタの高域特性による信号自体の減衰による。


注)この特性の電波が送信されるわけではない。これはDSP出力の特性で、このあとCFを通ることによって実際には折り返しは−50dBより良くはなる。後にサンプリング周波数とCF変更して、折り返しは−60〜−70dB程度まで減衰している。

b)帯域外の減衰特性

帯域外が本当に減衰しているかの確認のみ。
帯域外は60dB以上減衰している。


O.その他

1)セラミックフィルタの特性。
この特性から、折り返し、スプリアスの適当な周波数にDSPからのSSBの信号を変換する。
フィルタのどの位置に変換するかを、DDSの周波数を変えて決定する。


2)DSPの演算誤差によるフィルタの特性の劣化
フィルタの演算は、16ビットの固定小数点演算なので、最大減衰量は演算誤差に影響される。
フィルタの係数を丸めるときのbit数によるフィルタの特性の劣化のグラフを示した。
計算誤差がきわめて小さい(倍精度浮動小数点演算では)80dBまで減衰する。(127タップの例)
グラフの作成は、係数を指定のビット数で丸めたのち、ASCIIファイルに落とし、EXCELのグラフ機能を使用して描画した。

A)フィルタ係数の最大の数値が±16383になるように丸めた場合。

内部演算を15ビット固定小数点で行った場合。



B)フィルタ係数の最大の数値が±32767になるように丸めた場合。(現在使用中)

固定小数点演算の場合は16bitだとこの程度。約70dB減衰となる。



C)フィルタ係数の最大の数値が±65535になるように丸めた場合。

固定小数点演算の場合は16bitだとこれは不可能。
(17bitのため)



3)改善

いままでは、サンプリング周波数約18kHz、127タップの結果であったが、99年4月に約19kHz、151タップに変更した。
これによって折返しのレベルを約15dB下げることができた。
また、セラミックフィルタをCFKタイプに変更した。

以上3回にわたって記してみましたが、まだまだ書き足りません。
プログラムについてもっと記する必要があるのですが、8ビットのマイコンのアセンブラが書ける程度の知識は絶対に必要ですので今回はやめました。
といってもそんなに難しいわけでもありません。少し勉強が必要かなということで、私自身はこの程度であって必要最小限です。

DSP自体をもっと知りたいかたは、本が多く出版されていますのでそちらを参考にしてください。下記の1)はこのDSKの入門書としてはオススメです。この本がなかったらこの機械はできなかったでしょう。
DSKも本機のものよりもアップグレードしたタイプが発売されています。最も値段が倍近くしますが……

また、デジタルフィルタの本もたくさんありますので何か一冊くらいは読まないと理解しずらいと思います。

参考に私の読んだ本を挙げます。(本は高価ですね、また、本を読んでも実は1/3以下程度しか理解できなかったことを白状します。)

1)DSPプログラミング入門 瀬谷啓介著 日刊工業新聞社 ¥2800
2)デジタルフィルタ設計入門 尾知 博  CQ出版  ¥2500

現在、このジェネレータを使った機械で電波を出しています。
休日無線家でパワーが少ないので信号は弱いのですが、ローカルでしたら21メガあたりでなんとかなるでしょうし、3.5、7メガもでております。

最後に、以前ずいぶんとおせわになった国際のメカニカル・フィルタの分解写真をお目にかけます。MF455−10Zです。これはこれで良いものでした。


この記事の中で分からない所があった場合、それは私の責任です。
どうぞよろしくお願いいたします。



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