真空管ファイナルアンプの試作
2001/4/27  JA1VCW


A.製作動機

この1999年の5月の連休中にジャンクの整理をしていましたら、次のような部品がでてきました。
◎ 1kV150pFのタイト絶縁バリコン
◎ 昔、町の電気やさんでバラした東芝のカラーTVのトランス
◎ やたらと穴のあいたアルミシャーシ
◎ GT管の8ピンソケット 2個
◎ 電解コンデンサ 450WV,200μF  2個
◎ タイトのロータリーSW
◎ タイト絶縁30pFバリコン
これだけ揃っていれば、まさにファイナルアンプのキットなので、作らないわけにはいかない。
従って全く趣味であり、この忙しいご時勢に追試をされる酔狂方はいないでしょうが、作ってしまったので写真をお目にかけることにいたします。
1999年5月から作り始めて、同年11月に動作開始、そのあといじくりまわして使用していました。
2001年4月に思い出したようにこのレポートを書きました。

B.内容概要

内容はオーソドックスな" ドライバ−ファイナル "の2段構成です。
私のエキサイタは最大200mWまでしか出てこないので、数10Wまで増幅するためには2段必要です。
真空管は6146パラレレです(6146Bではない)。 本当を言えば807を使いたかったのですが手持ちがなく、秋葉原で買うと、なんと1本4K¥だそうでやめました。
ドライバは6CL6です。 以前は12BY7Aを使っていました。 変更して性能はさほど変わりませんが、内部の構造がしっかりしていますので、耐久性が違うと思われます。コリンズもよい真空管をさがしたものだと思います。

なにしろ動機がこんなものなので、どうしても出てきたシャーシを使わないといけないので、真ん中の部分は切り取ってしまって新しく板を付けました。 (アキバで1K¥も出せばりっぱなシャーシが買えるのですが・・・・こんなことの人件費はたいへんなものです。遊びでなくてはできない話)

回路自体はいたって簡単コリンズそのまま。 昔真空管を組んだことのある方でしたらご存知でしょう。 詳細回路図は載せません。 必要な方はご連絡ください。
ドライバ入力のところだけは、ちょっと工夫をして、8dB程度のRFNFBがかかっています。

C.性能

3.5MHz〜28MHZまで(除くWARKBand)電波が出ます。
残念ながら歪みの測定は出来ませんでした。 どなたかスペアナをお持ちのかたいらっしゃいませんか?

現時点の出力効率を測定しましたら次のようになりました。

D.感想

30年ぶりに真空管のファイナルアンプをつくってみましたが、結構くたびれました。途中でやになったことが何度かありました。昔とったなんとかで、簡単につくれると思ったのは間違いでした。
始めは中和はうまく行かないし、2トーン波形は悪いし、がっかりでしたが、いじっていると勘所がわかってきてそこそこ働くようになりました。

初めてNFBなるものをかけてみました。 考えていたよりは簡単にかかりました。 2トーンの波形を見ているとはっきり違いがわかります。 それとも初めがよっぽどお粗末か・・・・・

音は前のFETのアンプ(2SK408/409パラプッシュ50WOUT)に比較してめりはりがあるというレポートをいただいています。 なにが違うのかわかりません。
音質はジェネレータだけで決まるわけではないのですね。 どういうわけでしょう。 FETもそんなに2トーン波形はちがわないのですが。

6146*2で100Wを目指したのですが、プレート電圧が低いので結局低いBandで若干不足、高いBandで大いに不足でした。 データによると90Wくらいは出るはずですが、技術のない悲しさでした。28MHzのなんたること。
どなたかこの辺のうまい方法、データ等お持ちのかたいらっしゃいませんか。 ご教授ください。

このアンプの大きさは 200*200*260です。

付. NFBについて

NFBについては勉強していないのですが、フィードバックの量を計算すればいいのであろうということで、スパイスで計算させてしまいました。 世の中には便利な道具があります。ずいぶんありがたく使わせてもらっています。
アクティブな回路ではモデルの作り方で精度が決まってしまいますが、パッシブな回路では正確なので特にフィルタなどを作るときには非常に便利です。

ファイナル(V2)のPlare電圧とドライバ(V1)のGridの電圧比がわかればよいので、スパイスで1Vを入力したとき約7.4mVの出力なので、約7.4/1000という値です。 周波数特性もまあまあ(0.6dbの変動)。
位相回転は、約4deg以下になりました。(帯域が広くて良いかどうかはわかりません。高調波などの影響は ?)

一般の回路では、ドライバの入力に同調回路があるので、その影響を無くすためにフィードバック中和を施します。 この回路のようにブロードバンドの回路ではどうやら不要のようです。 ただしその引き換えは、エキサイタのパワーと言うことになります。  フルドライブするために約0.1W、程度必要です。
Aクラスの終段で1Wが取り出せるようでしたら十分だと思います。

もっとNFBについて2トーン、歪みなどデータをとればよろしかったのですが、仕事がQRLでこのままです。時間ができたらとりたいと思っています。

32S1の回路(一部定数がちがう)を同じようにシミュレーションしてみましたら次のようになりました。

1)フィードバック中和が正しくとれたときは 周波数を振ったときに±6.4度の位相誤差。
2)中和コンデンサを1割減少(55pF->50pF)しましたら、約-44度までずれた。
3)1割増やすと(55pf->60pF)約+44度のずれでした。
4)浮遊容量(44pF)を1割変化した場合も、2,3)項と同じような結果であった。
5)Rを50kΩにすると 位相差のピークの幅が狭くなった。また中和がずれたときの位相差の誤差が大きくなった。Bのとき-44->90度であった。
6)浮遊容量の44pF、同調容量の62pFなどは、適当な値で経験と感の値です。根拠があったわけではありません。
位相誤差の40度、90度がどのように影響するのか、体験したことがないのでわかりません。
4)項で浮遊容量の変化が位相誤差に影響が大きく、シングルバンドでは案外簡単にいけそうですが、バンドスイッチの配線、バリコンの回転角度に対する浮遊容量の変化などオールバンドでこのくらいの誤差を保つのはけっこう大変でしょう。
このあたりが難しいと言われたところでしょうか。
私は実験したことはないのでわかりかせんが、案ずるよりも産むがなんとかでしょうか・・・・・

参考文献    SSBハンドブック  CQ出版 1969

以上

おまけ 4-400Aの今となっては小さいリニアです。 真空管はいいなあ。  誰が作ったリニアなのか私は知りませんが、このチムニーは醤油ビンを切って作ったものです。